千代田城炎上     

溝口健二監督の内弟子助監督、私がした仕事                          映画「千代田城炎上」

  溝口式で考証した大奥のリアリズム

            平成211025日~22年1月1日

著者  宮嶋 八蔵

口述筆記  竹田美壽恵

ホームページ担当 勝 成忠

    

1.映画題名 禁男の城(後 千代田城炎上に改題)

2.制作年  1959年(昭和34年)

        溝口健二監督 没後3年

. 製作意図 異色ある女の世界 江戸城大奥を背景に、強く、美しく生きる女の半生を

       描いて、清新感動の時代劇を制作したい。


4.台本  資料1-1

  

  
 台本の裏面  資料1-2

  

5.スタッフ  

原作

長崎謙二郎

 脚本

依田義賢

 監督

安田公義

 助監督

宮嶋八蔵  溝口勝美 (池広一夫) (天野)

 撮影

相坂操一

 撮影助手

森田富士郎

 照明

古谷賢次

 美術

上里義三

 美術助手

内藤昭

 録音

海原幸夫

*スタッフには脚本の依田義賢、撮影には森田富士郎、美術には内藤昭、美粧に小林昇典、結髪に花井りつと元溝口組メンバーが沢山いたので私は、溝口スタイルでやれると思いました。リアリズムです。


. 台本の中身の紹介 資料1-3
 

 安田公義監督の演出は、絵コンテベースです。この絵は私が監督の絵を描き

写したものです。 

 

  資料1-4

  

7.

(1)溝口スタイルはまず調べ物からですが、大奥関係の女は、お末に至るまで「大奥の事は一切口外致しません」と熊野誓紙に血判して奉公に入るのですからそれの資料は一切見つかりません。ただ一つ昭和5年発行 春陽堂版 三田村鳶魚著の「御殿女中」があるだけです。


 資料2-1 「御殿女中」の本が納められた帙



資料2-2 「御殿女中」の布表紙 




資料2-3-2 御殿女中の研究 目録の一部


 目次は10頁に亘っています。

 (2)大奥の証言者 大岡ませ子刀自、ませ子さんの事

 (春陽堂版 三田村鳶魚著の「御殿女中」より)

  御小納戸(おこなんど)大岡忠右衛門の女(むすめ)に生れ御年寄瀧山を伯母に持ち

 天璋院殿(十三代家定将軍の御台所)の御中﨟(おちゅうろう)を勤め、後に摂津守(せっつのかみ)と云って慶喜(よしのぶ)公のお小姓であった村山鎮翁に嫁した人である。

  著書の内容は殆ど、この大岡ませ子刀自、ませ子さんよりの証言である。

  (3)徳川時代 千代田の花   表紙  資料3-1

 

  

資料3-2  千代田の花 目次の一部  


資料3-3 山里御花見の図

*この図は将軍家御台所例年の習わしにて山里吹上のお庭に咲き乱れる花の間に多くの女  中にかしづかれながめにあかぬお慰みげに泰平の御世のさま眼のあたり見る心ちぞするなり。


資料3-4 将軍御寝所の図

 *この図は御寝所の様を写したるものにて年若き女中の打連歩むは御中﨟とて当夜御添  臥の者なり。その他お年寄、御当番の女中、御坊頭(女性)など御次の間に御伽して夜もすがらぬねもなさずまもり居る人人の心のうちいとおもわれるをにこそ。

 

資料3-5 お末新参踊りの図

 
* 古へより大奥のおきてにて初めて御宮仕えに出るものは其の身にあしきかさ

 或いはみぐるしきほりものなどあらんをたださん為女中の身にあられもなきと

 なれど衣類を脱ぎ捨て裸体にて舞踊り古参のものは拍子をトリ唄いぞよめくありさま

 いとおかし是は事実に相違あれどはばかりてかく描きたるものなり。

 

 

以上は、明治28年に耕書堂発行 三宅彦次郎発行兼印刷者の図絵を私が古本屋で発見しました。先の「御殿女中」の本と照らし合わせて参考にしたものです。幕府の奥向きの事を書いたものとしては明治25年に出版した「千代田の大奥」2冊あったのですが、この書は異論があり採用するに足らずと思います。

大奥については、昭和5年発行 春陽堂版 三田村鳶魚著の「御殿女中」だけしか信用出来るものはありません。

 

8.千代田城炎上 製作スタッフ用に作った資料は宮嶋八蔵が作りました。

(1)「御殿女中の話」をまとめた資料  ① 資料4-1 表紙

25ページにわたる内容になっています。

 

②資料4-2

「御殿女中の話」をまとめた資料の一部

 

③資料4-3

「御殿女中の話」をまとめた資料の一部

 

④資料4-4

御殿女中の話」をまとめた資料の一部
 


⑤資料 4-5

「御殿女中の話」をまとめた資料の一部

 

後は省略しました。

(2)大奥お役表  資料 5           「御殿女中より」


(3)「大奥女中に関する参考」資料の表紙  ①資料6-1



②「大奥女中に関する参考」資料の内容   資料6-2



③「大奥女中に関する参考」資料の内容   資料6-3



④「大奥女中に関する参考」資料の内容    資料6-4


⑤「大奥女中に関する参考」資料の内容    資料6-5

 

⑥「大奥女中に関する参考」資料の内容     資料6-6


  ⑦「大奥女中に関する参考」資料の内容    資料6-7

 

⑧「大奥女中に関する参考」資料の内容    資料6-8


 ⑨「大奥女中に関する参考」資料の内容   資料6-9


 ⑩「大奥女中に関する参考」資料の内容    資料6-10

 

(4)千代田城炎上 衣装リスト 安田組 

① 衣装リストの表紙       資料7-1

 

②衣装リストの内容     資料 7-2


 ③衣装リストの内容    資料 7-3

以下省略

(5)スクラップブック 大奥関係参考資料 千代田城炎上参考写真(扮装テスト)
 1)宮嶋八蔵の創作資料と扮装テスト写真 (スクラップブックの内容紹介)

 

① 資料7-10   宮嶋八蔵所蔵 (自分用)

 

 

②資料 7-19  商家の娘  新珠三千代さん

 


③資料 7-18  千鶴の継母  平井岐代子さん 


④資料7-4 お末

 

⑤資料7-4-2 お末

 

⑥ 資料7-5 お末頭          ⑦資料7-6 お末頭



⑧ 資料7-7-2 御火の番 


 

  ⑨ 資料7-7-1 御火の番 

 

 ⑩ 資料7-8-2 御祐筆

 

 ⑪ 資料7-8-3

 

 ⑫資料7-9 お小僧(お小姓か)

 

 ⑬資料7-9-2



B   千代田城炎上

⑭資料 7-11

 

⑮資料 7-12

⑯ 資料 7-13

⑰ 資料 7-14

⑱資料 7-15 主人公の千鶴は、御年寄りに昇進して一生を大奥で終わるのです。

⑲資料7-16 お小姓

御台所や姫君の側に仕える

 

⑳資料7-17 御台所  阿井美千子さん


2)髪型   資料8-1     宮嶋が書き写した青写真

 

以下省略

 

3)千代田城大奥の全図    資料8-2-1-1 
 P1110246千代田城写真1.jpg  

資料8-2-1-2P1110251千代田城写真 5.jpg

資料8-2-1-3

P1110244千代田城写真4.jpg

資料8-2-1-4
P1110242千代田城写真 2.jpg

資料8-2-1-4
P1110243千代田城写真3.jpg

4)一の側年寄の部屋   資料8-2-2

5)①御台所の堤帯など  資料8-3 

宮嶋が書き写した青写真  

②  資料 8-4   宮嶋が書き写した青写真

9.スタッフ教育用に資料から宮嶋八蔵が手書きで写した青写真

 (1)乗り物、部屋飾り、持ち道具などなど 小道具一切

①資料9-1

②資料9-1-2

③資料9-2-1

 

④資料9-2-2


⑤資料9-3-1

⑥資料9-3-2

⑦湯殿具、持ち道具、部屋飾り、家具、履物、化粧道具、などの小道具類64点

 省略。

(2)扮装テスト並びに保存用スナップなど  順不同

 ① 資料 10-1

②資料10-3

③ 資料10-4

  ④資料10-5

 

⑤ 資料 10-6

⑥ 資料 10-7

10.ストーリーについて

 ・継母の奸計によって島流しも同然な大奥の女中奉公、一生の恋を犠牲にして

 才智と美貌で最下級の女中から最高権力者になる出世物語。

 (大映映画  年度別全作品集より)

・下記のプログに上手な紹介記事が詳しく掲載されていますのでそちらをご覧下さい。

(1).「さすらいの元会社員の映画館1000本ノック」

sasurainokaisyain.blogspot.com/2008/11/nd.htm/」の中で2008年11月(木)

(2).番組時代劇専門チャンネルのプログ

11.小屋(映画館)に張るスチール写真  

① 大奥に入る前の町娘の千鶴

②義母の勧めで大奥に入る。千鶴の役目は最下級の女中のお末でした。

③新参者の男踊りで人気者になり「大奥は女ばかり、淋しい身をいたわり合い、はげましあおうのう、姉妹のようにのう…」と口説かれました。

④「お火の番、相廻ります。」と巡回中「曲者」発見。

⑤伊予守より「そなたを大奥よりもらいうけ、添いとげたい」と告白される。

⑥ 狂った「稲月」は、大奥に火を放ち自決する。


12.おわりに

 (1)年寄 稲月 村田知栄子さんと安田公義監督との勝負どころ…

 この大奥の炎上は作品の山場となっています。稲月は気が狂って自殺するのです。

安田監督も勝負どころですから、役者の村田知栄子さんとの対決になります。テストはまあまあでしたので本番に入りセットに火をつけました。火の燃え頃に本番の掛け声がかかります。長い芝居場でした。炎は芝居に関係なくどんどんと燃え上がります。稲月の日本髪はこってりと鬢づけ油で固められているのです。頭に石油缶を載せているようなものです。監督はいつまで経ってもカットの掛け声をかけません。村田さんも「ストップ、待って!」とは言わないのです。これ以上2人の勝負が続けば村田

さんの髪鬘はボッと爆発したように火を噴くでしょう。私は監督の声を聞かぬ内に

キャメラ前へ飛び出して「カット!!火を消せ!」と怒鳴りました。安田監督に

「どうしてストップをかけないのですかっ! 髪が爆発して燃え上がりますよっ!」

  安田監督「… 勝負してたんだよ。… 」宮嶋「村田さんにも根性がありますから役者からは待ってくれとかストップとかは言えませんよ。僕が出すぎましたか?」

安田監督「いやいや ありがとう。」この後、村田さんにも非常に喜んで頂いて「何かお礼をしたいが」と言われましたので私は、「アメリカの飛行機 セスナ です。私、昔のパイロットでしたから……」と冗談にしてしまいました。その後も色々と可愛がって頂き、着物の生地や模様の名称など教えて頂きました。例をあげておきます。

 模様… 青海波を「せいかいは」と読んでいたのを「『せいがいは』と言うのよ。」と

教わりました。他にも 縞、盲縞、縦縞、横縞、子持縞、よろけ縞、子持よろけ縞、縦わく、様様な縦わく、模様の中には鳥襷や花模様などなどがあることなど、数えられない程いろいろな事を教えて頂きました。

(2)「千代田城炎上」の考証が役立った映画「歌麿をめぐる5人の女」

 ① プログ「宮嶋八蔵 日本映画四方山話」の中の「団子串刺し式私の履歴書」の中

   パート3に「千代田城炎上」をパート5に木村恵吾監督の「歌麿をめぐる5人の女」の一場面を紹介しています。一部を再録します。

   ・「千代田城炎上」では、チーフ助監督と風俗考証を兼任し従来の歌舞伎や時代劇映画の慣習(矢絣を主体とするユニホーム)を離れて、実証的な大奥風俗再現を行いました。

・「歌麿をめぐる5人の女」では「…シーンは御殿の池、お女中鯉掴みの場。内容は歌麿モデルを発見する。出役は母屋に殿を囲んで御台様、御年寄、御客会釈、御中﨟、お小姓、御次、など、池にはお仲居、三の間、お末など腰巻裸

50名夫々に手網を持つ…母屋廊下に歌麿が控えている…という舞台装置と思ってください。…」と、このような舞台装置を作れたのは「千代田城炎上」の風俗勉強の基を持っていたからです。

資料13-1 歌麿の浮世絵  御殿女中に扮する海女の参考 (お女中鯉掴みの場)
  


(3) 全資料の購入費の殆どは、会社から出ないのです。宮嶋八蔵の私蔵本とその時私個人が購入した資料本です。他の作品の場合でも私のついた作品では資料一切の購入費は会社から出してくれなかったのです。監督からの資料購入援助金も一切ありませんでした。企画部の書庫にも風俗史の資料は殆んどありませんでした。溝口監督の生存中には先生の私蔵本をお借りしていました。溝口組以外で使用する資料も溝口先生は私には優しく貸して下さいました。

  チーフ助監督がB班で本編の一部を撮った時には、B班手当。特報、予告編にも

手当が出たのですが、風俗考証には本代も手当ても出ませんでした。

 

(4)東京本社での初号試写の結果

   「どうしてこの映画をカラーで作らなかったのか。風俗が読めてなかったのか。」というのは最初の言葉であったと持参した助監督の溝口勝美から聞きました。また

  主役の新珠三千代さんも試写に立ち会われていて、その後大変な御馳走になったと

  喜んでいました。本当は本社の連中も溝口監督式リアリズム考証などは知らないで

  従来の奥女中― 矢絣ユニホームくらいの知識しかなく驚いたのでしょう。

 

(5) あとあとに溝口組的考証で作品に貢献した例は次にゆずります。

溝口組的考証で作品に貢献した主な作品

①鳴門秘帖(衣笠貞之助監督)②朱雀門(皇女和の宮)(森一生監督) 

③千姫(木村恵吾監督) ④歌麿をめぐる5人の女(木村恵吾監督)

⑤ぼんち(市川昆監督)⑥怪談累ヶ淵(安田公義監督) ⑦疵千両(田中徳三監督) ⑧忠直卿行状記(森一生監督) ⑨初春たぬき御殿 (木村恵吾監督)

⑩おてもやん(土井茂監督) ⑪悪名(田中徳三監督) ⑫破戒(増村保造監督)

⑬殺陣師段平(瑞穂春海監督) ⑭刺青(増村保造監督) 

⑮若親分出獄(シナリオ)  ⑯ 新・鞍馬天狗(安田公義監督)

⑰華岡青洲の妻(増村保造監督)などなど… 。

 

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